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*さいはての西*

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『円空を旅する』井上雅彦著 (BT BOOKS) 美術出版社


マンガ家・井上雄彦が
江戸時代に12万体もの仏像を彫った
「円空さん」に出会う。
北海道、青森、岐阜、愛知、滋賀、三重を
訪ね歩いて見た仏像の数、約1400体。
描き下ろしスケッチ72ページ掲載。
…………………………………………
“お師匠さんがここにいた! "
「ぼくのマンガが円空の仏像のようであってほしい」。
旅を重ねるなかで井上雄彦はそうつぶやいた。
江戸時代の修行僧であり彫刻家、円空。
生涯に12万体を制作した稀代の人物の
足跡をたどる旅がはじまる——
(Amazon.jp)


『バガボンド』『SLAM DUNK』が代表作の漫画家・井上雅彦先生が、全国の円空仏を尋ねて歩かれた旅のスケッチ・記録本です。
自慢じゃありませんが、『バガボンド』どころか『SLAM DUMK』も読んだことがないのです。今となってはもう自慢していいかもしれません。(よくない)(読みなさい)

東本願寺で親鸞の屏風絵を描かれたというニュースを拝見していましたが、この本でもご自分で「何か知らないけどお寺に縁がある」とおっしゃっています。特に意識的に仏教方面のお仕事を引き受けてらっしゃるというわけではないのですね。

円空は美濃国(現在の岐阜県の西側)出身なので、岐阜県が一番多いのですが、全国を行脚して回ったため、各地に円空仏が残されているのですね。
わたくしは特に仏像が好きというわけでは決してないのですが、どういうわけか円空仏は好きで、旅先や出張先で見かけることがあると時間の許す限りまじまじと見つめています。
なので、書店の店頭でこの本を見かけ、コミックスのところに並んでいたのでシュリンクがかかっていて中身を確認できず、お値段に一瞬迷ったものの、いきおいでえいやと買ってしまいました。


円空仏は、なぜかどれも微笑んでいるように見えます。
特に自分がすさんだ気持ちのときや落ち込んでいるときなどに見ると、なんだか落ち着きます。
自分が好きなもので、地元の方に話題のきっかけとして出したことがあったのですが、「円空仏、どこにでもあるから」と、まるで全国チェーンのコンビニの話みたいに吐き捨てられてしまったことがあります。地元の方からするとそんなものなのかもしれませんね。

逆に言うと、この本でも書かれているように、生活に密着している仏さまなのですね、円空仏は。
ザ・一発彫りの作品が多いそうで、例えば奈良の国宝級の仏像たちのように、仏師の念がこもりまくっていてときどき怖くなるということがない気がします。(『火の鳥 鳳凰編』を読んでしまってからは特に怖くてですね。)


写真や図はオールカラー、井上雅彦先生のスケッチも豊富で、読みやすい本だと思います。
美術出版社から出ているので、円空仏を美術品として鑑賞するために必要な情報なども巻末に簡潔にまとめられていて、円空仏に興味のある人にも、井上先生のファンだという人にも、どちらにもオススメではないでしょうか。井上先生の作品を読んだことがないわたくしが言っているのですから、だいじょうぶです。(全然だいじょうぶな感じがしない。)

わたしもこの本を片手に円空仏行脚をしてみたいです。




by n_umigame | 2015-12-20 18:40 |