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『ささやく真実』ヘレン・マクロイ著/駒月雅子訳(創元推理文庫)東京創元社

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奇抜な言動と悪趣味ないたずらで、周囲に騒動をもたらす美女クローディア。彼女が知人の研究室から持ち出した新薬には、強力な自白作用があった。クローディアはその薬を自宅のパーティーで飲みものに混ぜ、宴を悲惨な暴露大会に変容させてしまう。その報いか、深夜、彼女は何者かに殺害された……! 死体の発見者となった精神科医ウィリング博士が、意外な手がかりをもとに指摘する真犯人とは? マクロイ屈指の謎解き純度を誇る、傑作本格ミステリ。
(Amazon.jpより・画像も)


安心安定のヘレン・マクロイでした。

『小鬼の市』があまりピンと来ず、以降コンスタントに翻訳が出て、そのたびにそれなりにおいしくいただいていたのですが、やはりマクロイの翻訳が再度出始めたころの『幽霊の2/3』や『家蠅とカナリヤ』『殺す者と殺される者』辺りの傑作と比べると、クオリティが高いとは言いがたいなあというのが正直な感想でした。
ですが、今回は久しぶりに端正な謎解きをわくわくしながら楽しみました。

マクロイがよく使うような、オカルト的なところはなく、探偵役のウィリング博士が心理学者であるという設定を上手に使って犯人に迫る、非常に端正なミステリでした。
翻訳の文章ももちろんいいのでしょうが、マクロイの文章は読んでいて気持ちがいいです。
「ささやく真実」という邦題もすばらしいですよね。

ウィリング博士のシリーズではギゼラさんが好きで、ギゼラが出てくるとそれだけでうれしくなるのですが、いらいらするほど進展がなくてですね(笑)、で、時系列でうしろの方の作品だともう結婚してるんですよ。
ウィリングとギゼラさんの出会いを描いた作品もあるようなので、邦訳が待たれます。そしてなによりどのお話で結婚することになったのかも楽しみにしています。
今回の作品ではウィリングとギゼラさんとのデートに関する描写が重要な伏線になっていて、さすがだなあとうっとりしました。
ただののろけじゃないから、油断も隙もあったもんじゃありません。

東京創元社から出ているマクロイの本は、デザインも大好きです。



by n_umigame | 2016-09-21 00:04 | ミステリ