*さいはての西*

fwest.exblog.jp
ブログトップ

『雪と毒杯』エリス・ピーターズ著/猪俣美江子訳(創元推理文庫)東京創元社

d0075857_18583401.jpg

クリスマス直前のウィーンで、オペラの歌姫の最期を看取った人々。帰途にチャーター機が悪天候で北チロルの雪山に不時着してしまう。彼ら八人がたどり着いたのは、雪で外部と隔絶された小さな村のホテル。歌姫の遺産をめぐり緊張が増すなか、弁護士によって衝撃的な遺言書が読みあげられる。そしてついに事件が──。修道士カドフェル・シリーズの巨匠による、本邦初訳の傑作本格。解説=三橋暁
(出版社HPより・書影も)


映画『グレートウォール』のおかげで久しぶりに「修道士カドフェル」シリーズのことを思い出していたら(だいたい同じ時代設定)、なんとエリス・ピーターズの新刊が! 発売時に情報を取り漏らしていたのですが、おかげで真冬のシーズンに読めてかえってよかったです。
著者のエリス・ピーターズは1995年に鬼籍に入られていますので、まさか新刊が出るとは思っていませんでした。解説にくわしいのですが、「修道士カドフェル」シリーズは一度、社会思想社の現代教養文庫で全巻邦訳が出たのですが、社会思想社が倒産廃業され、その後まもなく光文社文庫から全巻再刊されたものの、現在はまた品切れになっているようです。せめてKindle等の電子書籍でいつでも読めるようにしていてほしい…。
サー・デレク・ジャコビの主演でドラマ化もされていて、ドラマも大好きだったのですが、こちらも日本盤ディスクは長年廃盤になったままのようで、本当に残念です。ヒュー・ベーリンガー役が3回も変わったからなの?(涙)

以下、ネタバレしていますので、もぐります。
明確なネタバレは避けていますが、ミステリー好きの方にはわかってしまうかもしれませんので、今からお読みになる方でネタバレされたくない方は、ここで回れ右推奨です。













久しぶりにこういう古典的なフーダニットのミステリーを読んで、身体から毒素が出ていったような気持ちになりました。いい本にはデトックス効果、ありますね。

とは言うものの、トリックで度肝を抜くようなお話ではなく、物語も昔のロマコメみたいですし、読み応えはとても軽いです。うかつにアガサ・クリスティーなどをオススメするよりは人様に安心してオススメできる仕様。(どういう仕様)
(クリスティーはうかつにオススメすると、本によっては深読みされて人間関係に支障を来す可能性が)

ちょうど半ばくらいで話がひっくり返るところがあるのですが、ミステリーを読み慣れている人からすると「へ?(´・∀・`)」となること請け合いです。
ゆるくて(笑)。
いいのかそんなことで。あと何その動機。
どんでん返しとすら言いたくないわ。
でもこのゆるさがこの小説の持ち味なんでしょうね。
エリス・ピーターズって確かにこう、ロマンスが甘めと言いますか、意外と純愛と言いますか、今なら高校生でももうちょっとひねた恋愛してるんでは? と想像してしまうのですが、この作品が発表された1960年にはぎりぎり行けたのかもしれません。(何が)

クリスティーを引き合いに出したので彼女の作品で言うと、トミーとタッペンスシリーズみたいなロマコメ感と、素人探偵ならではの脇甘過ぎでしょ感(話をひっくり返す動機がそれなのに、なんでそいつは無条件で信用するの? 吹雪の山荘ものよ? クローズド・サークルよ? 全員容疑者に決まってるでしょ?)、そしてもちろんだからこそのヒロイン大ピンチ★展開、紛らわしいことをするやつはあっさりすぐしっぽを出し、不義には罰が下るという辺りが、まじめな作家さんだったのだなあと改めて思いました。(カドフェルもまじめだったわ…)
それから犯人の動機がまたこれシャーロック・ホームズの時代なの? と。シャーロッキアンでなくても、ホームズのアレを容易に思い出すと思います。だからクリスマスなのか。

などなどツッコミはあるのですが、さらっと1日で読めて、心地のいい時間を過ごせました。

原題は"The Will and the Deed"。このwillは「意図」という意味と「遺言状」のダブルミーニングになっているのですね。



[PR]
by n_umigame | 2018-01-03 23:38 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://fwest.exblog.jp/tb/26295850
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。