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*さいはての西*

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ITV版「メグレ警視」シリーズ1~2(4話)

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■AXNミステリー公式HP
 

「Mr.ビーン」のローワン・アトキンソン主演!
「刑事フォイル」「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」の製作陣が手がけた、ジョルジュ・シムノン原作の本格ミステリーシリーズ
看板番組「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」「刑事フォイル」が完結し、これらの後任を担う番組としてITVが2016年に放送した最新作。初回放送時7,200,000人の視聴者かつ28.8%のシェアを獲得し、文句なしの大ヒットとなった。
「刑事フォイル」のプロデューサー、「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」の脚本家が、日本ではファンの多い「Mr.ビーン」のローワン・アトキンソンを主演に迎え手がけた、本格ミステリーシリーズ。
(AXNミステリーより・画像もすべて)

***

あれだけ「日本で放送してほしい!」と大騒ぎしておきながら、せっかく放送していただけたのに感想をアップしないのも不義理かと思い、遅ればせながら感想をまとめておきたいと思います。

めちゃくちゃ長いので、ご用とお急ぎのない方だけ以下どうぞです。

***

キャストについてなどはこちら()の記事で一度ご紹介していますので、今回は実際に見た感想をつらつらと書かせていただきます。


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最初から総評となりますが、「運命の修繕人」メグレを、とかくフランスとはそりが合わない因縁の仲のイギリスの人が描くとどうなるか、というところに、興味津々でした。(イケズ)
配役に関しては、先に記事にもアップしましたとおり、止め絵で見ている限りでは不安も不平もありませんでした。
原作のメグレはビッグ&ファットガイ(だけど身軽)なので、ローワン・アトキンソンの細長いシルエットとは正反対なのですが、実際に動き出しても視覚から入ってくるキャラクターのイメージでこれは飲み込めないという人はいませんでした。

ウィキペディアの当該ページによりますと、ロケはイギリスではなく、ブダペストとハンガリーで行われたそうです。
Maigret (2016 TV series)
https://en.wikipedia.org/wiki/Maigret_(2016_TV_series)

セットなどをPinterestにアップしている方がありました。
http://dominichyman.co.uk/2017/01/04/maigret/
↑ちょっと生々しい画像もあります。

https://www.pinterest.jp/location007/maigret-2016/
眺めているだけで眼福であります。

それで、だからというわけでもないのですが、全体的にあまりフランスっぽく見えなかったのだけが残念でした。
本当に細かいところなのですが、内装や衣装など、フランスを意識しているんだろうなということはわかるのですが、それがかえって、これがイギリスの人が作ったドラマだということが透けて見えてしまっているように感じてしまいました。そもそも英語で話してますしね。
キャラクターの名前だけフランス語風に発音していて(英語ならメグレの名前も「メイグレット」というように発音しそうです)、パリとか固有名詞は英語の発音ですし、原作(原文?)では「パトロン」と呼ばれているメグレが「チーフ」と呼ばれているのも、原作既読組には座りが悪かったです。
そういう細かいところの積み重ねが全体を作っているので、やはり細部も大事だなと思いました。

ローワン・アトキンソンのメグレは、決して悪くはないのですが、メグレ警視かと言われるとやはり違うかなというのが正直な感想です。
メグレは元々、個性があるんだかないんだかわからないようなキャラクターですが、あるものはあるとして受け入れる、清濁併せ呑む懐の深さがあります。ただそこにいるだけなのですが、その「ただそこにいる」存在感が頼もしいのです。
そこをローワン・アトキンソンは「無表情で受け流す」という演技でメグレを演じていて、それはそれで落ち着いた感じで良いのですが、茫洋としてつかみがたい原作のメグレというよりは、冷静沈着で有能な刑事という意味で、「打って出ている」メグレなんですね。

メグレものは何作かは早川書房から刊行されていますが、ほとんど河出書房新社から出ています。
その意味するところは、原著がいわゆる謎解きミステリーでもサスペンスでもなく、どちらかというと普通小説に近いものだからだろうと思います。

確かに、「人が殺されて、その犯人がわかる話」なのですが、人が殺されたから犯人を捜すのはメグレが警察官で、それが仕事だからです。
メグレは仕事熱心ですが、「謎」そのものに耽溺しません。
積極的に謎を解いている姿勢を読者に見せるタイプの探偵役ではありません。
場合によっては何もしていないようにさえ見えます。やがて事件は解決しますが、そこにごりごりと理屈をつけて説明するというスタイルは取りません。ですから、なぜその人物が犯人だったかとか、その犯行はその人物に物理的に可能だったのかとか、謎解きミステリーを読むつもりで読むと、消化不良になってしまいます。

メグレものは謎解きを楽しむタイプの小説ではなく、メグレという、ぬえのようなつかみどころのない、それでいて自分の人生や、身の回りの人やその有り様を、どうしようもないようなこともひっくるめて愛していることがわかる魅力的なキャラクターが、パリという街と渾然となって、見ているものを共に体験するような小説です。
わたしのようにそれがとても心地よくて、起きていることは悲惨だったり醜かったりするのに、いつまでもこのメグレのいる世界にいたいと思ってしまう人にはおすすめです。
が、謎を解くことを主眼としたこってりミステリーを味わいたいと思っていた向きには、あっさりしているうえに何を食べさせられたのかすらわからない、ということになってしまうかと思います。
ドラマは、この後者をターゲットにしたのかなと感じました。

シャーロック・ホームズとロンドン、エラリイ・クイーンとニューヨークのように、特定の都市と切り離せないタイプの探偵がいますが、メグレとパリは切り離せないものだと思います。
ローワン・アトキンソンのメグレは、このパリと半分同体化しているような感じがないように思います。ローワン・アトキンソンがどうしても典型的なイギリスの人というイメージがありますし、ほかのキャストもスタッフもイギリスの人なのだから、仕方がないと言えます。

ドラマとしてつまらないとか、クオリティが低いということでは、まったくありません。
謎解きが好きな人をターゲットにしたミステリードラマとしては、(不遜な言い方ですが)過不足なくよくできているドラマだと思いました。
でも、イギリスにはクオリティの高い謎解きミステリー小説は、たくさんあるわけです。
であるならば、なぜ、しかも今、イギリスの人がメグレものをテレビドラマにしようと思ったのか、結果成功したと言えるかと問われると、やはり疑問が残る作品かと思いました。
現在シーズン2の4話まで見ましたが、その問いには答えてもらえませんでした。

メタ的な理由、大人の事情とも言いますが、AXNミステリーの紹介にもあるように、ITVは「名探偵ポワロ」の終了を受けて、これに代わる人気定番ドラマを制作したかったようです。
「ポワロ」は、シリーズ最初の頃は1回30分番組で、ユーモアを上手に交えてた視聴しやすいドラマでした。尺が長くなり、重厚な内容も放送しだしたのはもっとあとのシリーズになってからです。
メグレは最初から長いし重いし、上述したように、イギリスの人は特に、このフランスを舞台にしたイギリス人が作った仮装フランスドラマをどういう意義をもって見ているのかという部分も疑問が残り、シリーズ3以降のロングランは厳しいのではないかと、正直感じてしまいました。
具体的には各エピソードの感想に書きましたが、ローワンさんのメグレは、原作のメグレが持っている良い意味で猥雑なところがなく、あまりにも清潔すぎます。
制作してくれたらもちろん見たいですが、もうひと味ほしいところです。

***

実際にドラマを見てからのキャラクターについて。

原作ではメグレ班のレギュラー刑事は、リュカ、ジャンヴィエ、ラポワントの3人。ほかにトランスと、<無愛想な刑事>ロニョンが登場します。
ドラマでは、一番の古株でメグレが息子のようにかわいがっているリュカは登場せず、ジャンヴィエ、ラポワント、ロニョンだけがレギュラーで登場しています。
確かに、リュカとジャンヴィエはどちらもメグレがかわいがっている部下なのですが、ややキャラがかぶるところがあり、ドラマでどちらか一人だけ採用しようとなったようですね。なぜそこでジャンヴィエを残したのかわかりませんが、リュカより名前が発音しやすいからかもしれません(笑)。
ラポワントは原作では<チビの>と訳されていますが "petit Lapointe"なので、一番年若いというほどの意味です。登場したときは新人で初々しくて、メグレの役に立とうと必死で仕事をしている様子がほんとうにかわいくてほほえましいのです。
ロニョンはメグレの部下ではなくて、モンマルトル署に所属の刑事です。まじめに仕事をしていて、気の毒な境遇の家庭なのですが、ひがみっぽい上にだらしない格好をしていることが多いため、刑事仲間からあまり好かれていません。
メグレのいるパリ警視庁(司法警察局)がシテ島のなかのオルフェーヴル河岸にあるので、単に「オルフェーヴル河岸」というとパリ警視庁を指すことがあります。日本でも警視庁のことを「桜田門」と言うような感じでしょうか。そのままずばり「オルフェーヴル河岸」というタイトルの映画がありました。(邦題『あるいは裏切りという名の犬』ジェラール・ドパリュデュー主演。一時期はやったこのハードボイルドポエムタイトル好きでした…(笑)。)フランスの警察機構についてはWikipediaなどをご覧ください。
この辺りのキャラクターは、第1話は紹介に終わった感じですね。

忘れてはならないのは、メグレ夫人の存在です。
メグレ夫婦はおしどり夫婦で、お互いのことをとても大事にしているのが伝わってくる素敵なご夫妻なのですが、ドラマは原作以上に登場シーンが多くて、うれしかったです。
演じているルーシー・コフー(Lucy Cohu)さんはやはりITVのドラマによく出てらして、『名探偵ポアロ』の「チョコレートの箱」のデリュラール夫人(冒頭で死ぬ人)、『ミス・マープル』の「ポケットにライ麦を」、ほか『トーチウッド』『ルイス警部』『ブロードチャーチ』『ミステリー・イン・パラダイス』等、日本でもおなじみのドラマに出演されている俳優さんです。わたしは『リッパー・ストリート』が一番印象に残っています。



***

以下、各話の所感です。
ネタバレになりますので、気にされる方はここで回れ右願います。













■S1E1:Maigret Sets a Trap
<あらすじ>
パリ・モンマルトルで女性5人が惨殺された。犯人は自分の犯行を誇示する性格なのではとの指摘を受けたメグレは、あることを思いつく。偽の犯人を捕らえたと新聞に書き立たせ、それを見た犯人が新たな犯行に及ぶのではと、おとりの女性警官たちを街に放つのだが、私服警官たちが見守る中、女性警官が襲われてしまった。
(AXNミステリーより・以下あらずじ同)
原作は『メグレ罠を張る』(早川書房)。

メグレものの中では比較的、謎解き要素、サスペンス要素の強いお話です。
とはいえ、やはりごりごりの謎解きというよりは、心理的な側面から犯人を絞り込んでいくという展開で、証拠も状況証拠の域を出ていないようですし、そこから導き出される結論も鉄壁のロジックかと言われるとあやういです。
このエピソードは「切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)」が元ネタになっているのかもしれません。
ラテン系の国のドラマを見ていると、「お母さん」の立ち位置が英語圏のドラマとは違うなと思うことが多いのですが、これも、一人の人間として自立できないまま、妻と母親の間で板挟みになって、歪んでしまった男性のお話です。
この話は謎解きミステリーとしてはわかりやすいので、ドラマ向きだろうと思いますが、メグレもののおもしろさという点ではどうかなあという作品です。



■S1E2:Maigret's Dead Man
<あらすじ>
パリ郊外のゴデルヴィルで裕福な農家が襲われる事件が3件発生。容疑者はパリから120kmも離れたゴデルヴィルに鈍行列車で向かった人物とされていた。同じ頃、メグレに見知らぬ男から助けを求める電話が入り、男が指定した場所に刑事を派遣するが、すでに立ち去った後。ある夜、電話の主とおぼしき男の死体が発見される。
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原作は『メグレと殺人者たち』(河出書房新社)。

原作では、メグレは成功したたいへん有能な警察官で、新聞にもよく掲載されることから名前と顔の知れた著名人であり、パリ中の人から尊敬されています。
街を歩いていても、パリジャン/パリジェンヌから敬意を込めて会釈されたりすることもしばしばあるという人物です。素朴な人は、メグレを自分のヒーローのように思っていたりします。(メグレと同じ時代のアメリカの刑事物などを読んでいると、「警官は市民から軽蔑され、豚呼ばわりされている」「警官の家の子だとわかると周囲から白い目で見られるので、子どもは早く家を出たがる」「刑事は離婚率が高い」といった描写がちょこちょこ出てくることと比べると、フランスでの警察官のイメージとの違いにびっくりしてしまいます。原作者のシムノンはベルギー出身ですが)
このエピソードも、メグレを知っているという人物から、自分を助けてほしいという電話が入るというところから始まります。ですが、これも原作通りなのですが、メグレは自分が親切にした相手のことをだいたい忘れています。それはメグレの良いところなのですが、おかげで事件の解明がなかなか進まないこともあり、今回もそのパターンです。

この話は1話目よりはメグレものっぽいところが強いと思うのですが、大捕物があったりと、やはりドラマにしやすかったのだろうと思いました。
ヨーロッパの移民問題など、現代的なテーマもあると判断されたのかもしれません。
メグレ夫人がビストロの女将さんとしてかり出されたりして、ドラマはメグレ夫人の出番をかなり増やしてあります。メグレ夫人が大好きなので、出てきてくれるとうれしいのですが、こんな危ないところにメグレ夫人をかり出さないでよ! とも思います。
さっきからメグレ夫人の名前で呼んでいないのは、実はメグレ夫人の名前がわからないからなのです。ドラマでもわかりませんでした。
これは実は原作でも、このご夫婦は「メグレ」「メグレ夫人」と呼び合っていて、上の名前ではほとんど呼ばないのですね。とても仲の良いご夫婦なので、なかばふざけてそうしていることと、たまーに出てきたメグレ夫人の上の名前が前出てきたのと違ったりします。(シムノンさん…。)
メグレ夫人はとても料理が上手なので、メグレ夫人がお料理してくれるレストランが本当にあったら行ってみたいです。



■S2E1:「夜の十字路」/ Maigret Night at the Crossroads
<あらすじ>
ベルギーに住む宝石商の遺体が車の中から発見された。メグレは車が見つかった車庫の持ち主で逃亡を図ったアンダーソンを容疑者として尋問。無実を主張するアンダーソンの供述に真実を感じ取ったメグレは、敢えてアンダーソンを泳がし、事件の真相を探ろうと、彼の釈放を決める。そんなある夜、第二の事件が起きる。
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原作は『メグレと深夜の十字路』(河出書房新社)、『深夜の十字路』(早川書房)。

久しぶりに原作もざっと読み直してのですが、原作を上手に組み替えてドラマにしてあり、筋として通しでわかりやすいものにしてありました。
これも畑での大捕物があったりと、ドラマにしやすかったのかもしれません。
シリーズ2になって、ややメグレものらしいエピソードを採用しているなと思いました。



■S2E2:「ピクラッツのメグレ」/ Maigret in Montmartre
<あらすじ>
ある晩、アルレットと名乗るキャバレーの踊り子が警察を訪ねてくる。彼女は客の2人組の男が伯爵夫人を殺害する計画について話しているのを聞いたという。酔っ払っていたアルレットはそのまま眠ってしまうが、「オスカル」と叫び目を覚ますと、メグレを振り切り帰ってしまう。翌朝、アルレットが自宅で絞殺体となって発見される。
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原作は『モンマルトルのメグレ』(河出書房新社)。

この話も前回に引き続き、いわゆる<ファム・ファタル>のような女性が出てきます。
英語圏の小説とフランス語の小説で、一番違うなあと感じるのは男女間の描き方です。
同じ人間なので、互いに慕わしく思う、またはそれがこじれて修羅場になる、などという場面は世界共通で小説に出てはきますが、それを眺めている人間の視線が違うように感じます。
そこへ、メグレの部下である年若いラポワント(なんと初恋です)の純愛が絡んで盛り上がります。

この原作は、わたしはメグレものの中でもかなり早いうちに読んだのですが、あまりフランス文学を読みつけていないこともあってか、最初はとまどいました。
ラポワントの一途で純真な恋はさておくと、ピクラッツの非道いオーナーとその妻や、踊り子たちとの関係など、.良くも悪くも潔癖なプロテスタントの国とは違う文化だなと思います。
アモーレの立ち位置がイギリスの小説なんかとは違うと言いますか。
(「恋愛」と言うより「情事」と呼ぶ方がふさわしいような関係がたくさん出てくるように思います。で、ときどき「えっ、本気でそんなに好きだったの!?」って驚くような展開になったりですね)

ラポワントから、事件の重要参考人が実は自分なんですと告白されるシーンの、メグレのリアクションが、ドラマではそれが端的に表れていたと思います。
ドラマでは、ラポワントが黙っていたことを、この無表情ローワンさんメグレがめずらしく怒りますよね。みんなが一生懸命探していた重要参考人が、自分の部下の刑事だったのだから、そりゃ「早よ言わんか」となるのもわかりますが、それに加えて「警官たるものがあんないかがわしいキャバレーに出入りして、踊り子に入れあげるなんて」という批判的な視線も感じました。
ですが、原作では案の定と言いますか、メグレ怒らないのです。「もうしょうがないな-、それで?」という感じ。
総評のところでも書きましたが、メグレは清濁併せのむふところの深い人です。ただそれは、不正を許すとか自分も不正に手を染めるということではなくて、ダメなことはダメだけれど、あるものはあるとしていったん受け入れるということなのです。
だから、ラポワントが重要参考人だったとわかったときにも、誰かに惚れてしまうのは自分ではどうしようもないし、誰を愛するかということも自分では選べないということがわかっていて、だから(早く言ってほしかったけど、言い出しにくい気持ちもわかるし)しょうがないなあ、となるのだろうと思います。「君の名前がアルベールだということを忘れていたよ」で済ませるのですね。言い出さなかったラポワントだけが悪いのではなく、まるで部下を疑わなかった自分も悪かったというような、思いやりのある言い方です。
メグレのこういうところが好きなのですが、特に、この原作のラストシーン。
どうしてこれをドラマでもやらなかったんだ! と最初は思ったのですが、純真な恋心から自分が重要参考人であることをなかなか切り出せなかったラポワントを叱り飛ばしてしまうような、厳格で清潔なだけのローワンさんメグレには、この原作のふるまいは似合わないと思って、削ってしまったのかもしれません。
あるいは、ドラマのスタッフが潔癖な人で、原作のメグレが部下を甘やかしすぎだと思って変えてしまったのかもしれません。
事件が解決すればそれで終わり、のドラマとは違って、最後の最後までラポワントの純真な恋心を大切に見送ってくれた原作の方に、優しさを感じます。

犯人が唐突に出てくるのは原作どおりです(笑)。
メグレものの面目躍如という感じです。『モンマルトルのメグレ』は、1冊の小説としてもクオリティの高い作品だと思います。




by n_umigame | 2018-05-26 23:33 | 映画・海外ドラマ