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『すべて忘れて生きていく』北大路公子著(PHP文芸文庫)PHP研究所

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小さい頃から「早くしなさい」と言われ続けた私が気がついた世の中の真実とは――。「どんな毎日にも笑えることを見つけることができる」と信じる著者による、珠玉のエッセイ集。相撲への愛が迸るロングエッセイ、日常のゆるい出来事を導入にいつの間にか本の内容に鋭く切り込んでいく油断のならない書評集、奇妙な味わいの掌編小説二編も収録した、キミコの魅力に満ち溢れた一冊! 本人も「書いたことを忘れていた」貴重な原稿が満載です。
(出版社HP・書影も)


北大路公子さんの新しい本が次々と読めて、うれしいです。

やったらだめだとわかっているのに、また「通勤中の電車の中で読む」ということをやってしまい、何かの罰ゲームみたいになってました。
はたから見たら、沿線の不審者再び。
いつも同じ車両に乗り合わせる方々には「またあいつか」で済んでいると思われますが(まだ通報されたことないし)、初めて見る人からしたら怪しいですよねえ…。そういえば最近、同じ時間の同じ車両で見かけないな、って方が何人かいるんですけど、なんでですかね。春だったからですよね。異動とかですよね。異動だよって言って。


さて、今回の本は、エッセイ集なのですが、キミコ(一方的な尊敬と愛着を込めた呼び捨て)のいつもの日常生活のひとこまだけでなく、書評と小説2本も収録されて、言うなればキミコの幕の内弁当(ただしコンビニで売ってる感じ)。
たいへんお買い得だと思います。
コンビニで売ってる幕の内だと思って侮るなかれですよ。ときどき料理人の方が監修したのとか、けっこう美味しいんですよ。また食べたいって覚えてるくらい。

書評は日本の小説が多いのですが、見開きで収まる程度の文字数でその本の良さが伝わってきて、何冊か読んでみたいなと思いました。書評や感想って、本来はこうあるべきですよね。(私は個人のブログなので、ネガティブなことも書いてしまいますが)
日本の小説はコスパが悪いので(そんな理由かい)(借りて読めよ)(でも本は買って読みたいの)あまり読まないのですが、これとこれは読みたいなーと付箋をびろびろと貼りました。


エッセイは、お相撲さんについて熱く語るおばあちゃまのお話がしみました。

 おばあさんから溢れていた、憧れやときめきや畏怖のようなものを今になって私は思い出す。(中略)誰かの愛情や「好き」を笑うことは恥ずかしいことだと、私はたぶんあの時初めて感じだのだ。(p.96)

うんうん、わかるなあ。
私もこういう場面に大人になってからも何度も、というか、日常的に出会うので、しみじみ「そうだよね、キミコ…!」とハグしたくなりました。(迷惑。)
あと、偉人伝とか読んで、ほかにこんなに立派にがんばってる人がいるから、自分はがんばらなくていいや。ってなる気持ち、めっちゃわかる。(だめじゃん。)


小説は、マジック・リアリズム的なお話でした。
これまで読んできたエッセイからもそれは感じていたのですが、どこまで現実でどこから夢か、わからないような作品も多かったですよね。
それをそのまま小説として表現されたような短編でした。
1本目の「まち」も2本目の「ともだち」もどちらもなんだか不気味なところもいいです。ホラーとかそういうお話ではないのですが、覚めない悪夢のような、境界のはっきりしないまま飲み込まれて、そこから脱出できないような気味の悪さがあります。それでいてどこか優しい感じがする。
エッセイ→書評と読んでからこの小説を読むとすんなりくる構成もよかったと思います。


「無理っす」(あとがき参照)とか言ってないで、こんな感じで、年に1冊ペースくらいで新刊が読めるとうれしいです。




by n_umigame | 2018-06-09 23:58 | | Trackback | Comments(0)
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