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*さいはての西*

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『ミス・マープル』 牧師館の殺人

新しいミス・マープルです。
ジョーン・ヒクソン・マープルが「生まれたときからおばあちゃま」(そんな人いません)というイメージだったのですが、今回のジェラルディン・マクイーワン・マープルは、若いときはいろいろあったよね? という感じで、いきなり若かりしころの恋のエピソードが入ったりするところからもその路線(どの路線)でゴーという企画なのでしょうか。

何よりちょっとびっくりしたのが、
声・岸田強固(バカ変換め…)じゃなくて今日子 さん。
最初あまりの自分のイメージ(岸田今日子さんのイメージ+ミス・マープルのイメージ+ジョーン・ヒクソン版マープルのときのイメージ)が「混ぜるな危険」状態だったのに混ぜちゃって、うっっへえええーーー!! …という感じになっていたのですが、2回目を見ているうちに慣れました。そこは皆さまいかがだったでしょうか……。

やはり、ミス・マープルものの中でも特に原作が秀逸ということもあって、『牧師館の殺人』と『予告殺人』来たかー!うむ!という感じでしたが、キャストががらっと変わるだけでこんなに新鮮なんですね。(クリスティはあんまりハズレないですけれども)

 で、『牧師館の殺人』ですが。
 豪華キャスト(わたしにとって)デレク・ジャコビがー!!! お久しぶりです、サー。しかもこんな因業爺いの役、めずらしいですね。いや、今までも、善人でない役はありましたが(むしろそっちの方が多かったかも)、退役軍人の役というのもめずらしいかも? しばらく見ない間に、やはりお年を召されました…でも、デレク・ジャコビの演技は健在。ああこのしぐさ、このセリフ回し、サーですよデレク・ジャコビですよvvvvv わたしのように「サー・デレク・ジャコビ・ラヴ・リローデッド」な人間が現れるのを見越してか、ミステリ・チャンネルではまた『修道士カドフェル』始まりますよー! 見てネ★
 そんな話はどうでもいい(いやどうでもはよくない)ですが!
 ミス・マープルの過去の恋人は、実は原作を全部読めていないため知らなかったのですがこれは原作通りですか? (そして恋人役はこれまた『華麗なるペテン師』のダニーことマーク・ウォーレンでしたね。イギリスの役者さんって基礎がみっちりできている人が多いせいか、本当に、若くても古典をやっても現代物をやっても、馴染むし似合う人が多いなあ…と感心します)
 スラック警部は、ヒクソン版のときはいかにも小役人という感じの演技がナイスな方でしたが、今回は、ミス・マープルを最初はバカにしながらもだんだん認めていく心理プロセスがよく出ていました。「チョコレートをプレゼントしようか杖をけっ飛ばそうか迷う」というのは名セリフですね。

最後に、きっちり処刑シーンを入れ、同時刻に教会で祈るミス・マープルを入れるところに、制作スタッフのスタンスのようなものをひしひしと感じ、その心根に、しみじみ感動いたしました。

クリスティの名探偵たちも、古典黄金時代の探偵たちのご多分に漏れず、殺人犯は明かされたがそれは結果的に人としてどうなんだ、終わりさえよければ本当にいいのかそれで、という背筋の寒くなるような屈託のない作品もあります。
ただ、そこはクリスティは非常に聡明な人ですから、きちんとご自分で気づかれています。
ポワロに関してはクリスティ自身の見解が明らかにされていますように、結末は『カーテン』なわけです。
「人を殺した人間は殺してもいい」という同じ土俵に立つ以上、では、殺人犯と探偵の違いは何だ、という、非常に重い問題にならざるをえません。
勧善懲悪で済んでいた時代はそんなことはあまり斟酌せず、「人殺し=極悪人」ということで、「極悪人→死んでもらいまひょ」という図式に、表だっては誰も疑義を差し挟まなかったのでしょうが。

しかし、こうやってどんどん新しい価値観が生まれる、時代、時代を生き残ってなお、新しい解釈が介入できる作品を「古典」というのでしょう。
久しぶりにまた「やっぱり、クリスティはコンプリートしなくっちゃ」と思いましたです。(まだ6割くらいしか読んでない…)『ミス・マープル』 牧師館の殺人_d0075857_1618611.jpg
by n_umigame | 2006-12-09 19:24 | 映画・海外ドラマ