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*さいはての西*

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『カレル・チャペックの警告』 カレル・チャペック著/田才益夫訳(青土社)

世界平和のために提言と警告

誰かが溺れているときに、誰かが水に飛び込んで彼を救うべきであるという理性的意見だけでは足りない。歴史は誰かが何かをなすべきであると提案する人よりも、むしろ何かをしている人を必要とする。(チャペック本文より)

ときには、人間は探偵小説を必要とします。あらゆる種類の深刻でしかも高尚な文学は少々残酷で、憂鬱で、痛々しいと感じるときもあります。それは何か決定的に自分自身の人生を思い起こさせるからです。そこで何か毛色の違ったものに手を伸ばします。(「探偵小説について」 より)


チャペックの皮肉の効いたユーモアが大好きなのですが、この本は青土社から出ているこれまでのチャペックの作品集とは少し趣が異なります。
解説にもありますが、やはり1930年を境にヨーロッパ、世界を覆う戦争、とりわけチャペックの祖国チェコスロヴァキアにとってはドイツ、イタリアの暗い影が、チャペックの筆にも影を落としています。

とは言うものの、チャペックの人間の尊厳に対する深い敬意と愛は不滅です。
いったい、この時代に、関東大震災で犠牲になった人々を慮ってくれたヨーロッパの人間がどれほどいたことでしょう。

「探偵小説について」 で、「女が出てきたとたんに探偵小説はダメになっちまった」というようなことを書いていて、それについては言いたいこともありますが、それでも、カレル・チャペック、あなたなら許す(笑)。
(同じようなことを書いていて「この人バカかな」と思うこともあるので、不思議ですねえ…。チャペック・マジックですよ。)

最近は文庫でも次々と出ているので、おもしろそうだと思うところからぜひ読んでみて下さいませ。
by n_umigame | 2007-10-06 16:27 |