『クリスマスに少女は還る』 キャロル・オコンネル著/務台夏子訳(創元推理文庫)東京創元社

クリスマスを控えた町から、二人の少女が姿を消した。誘拐か?刑事ルージュの悪夢が蘇る。十五年前に双子の妹が殺されたときと同じだ。そんなとき、顔に傷痕のある女が彼の前に現れた―「わたしはあなたの過去を知っている」。一方、監禁された少女たちは力を合わせ脱出のチャンスをうかがっていた…。巧緻を極めたプロット。衝撃と感動の結末。新鋭が放つ超絶の問題作。


クリスマスまでに読もうと思っておりましたが、年が明けてしまいました。

海外ミステリと海外SFの邦題はたいへんセンスの良いものが多いですが(映画配給会社の邦題を決める人はぜひ爪の垢せんじて飲むよーに。)、この作品もたいへんすばらしい邦題であることが、読み終わるとわかる、というしかけになっております。
また、原題"Judas child"は「囮の子」という意味だそうですが、こちらもなるほど。タイトルロールで決め手はまさにこの子ですね。

えー、わたくし、この手のオチは本来大好物です。
お話としても、多少冗長である部分は否めないかとは思いますが、よくできていると思います。(ちょっと翻訳が読みにくいですが。主語と述語がわかりにくいと言いますか、5W1Hの描写が甘いと言いますか。自分が合わないだけかもしれませんが)
なのですが、いまひとつ乗れなかったと申しますか、「あれ、おっかしーなー、なんでなんだろ、ここでぐっとくるはずなんだけどなー???」と自分でも不思議に思いつつ読み終わりました。

以下、犯人以外はネタバレでまいりますので、ご注意下さい。↓

これは、非常にざっくりといきますと日本昔話で言うところの、



「子育て幽霊」オチです。(ざっくりすぎ。)

愛ゆえにあの世から還ってくるというほどの意味合いで。

「えー! ミステリなのにオカルトがらみ?? じゃ、おら読まね。」という向きもあろうかと思われますが、わたくしは『アクロイド殺し』がフェアかアンフェアかなどどーでもよく、「おもしろい!!」と大コーフンした口ですので、このお話も、そこにひっかかっているわけでは決してないのです。

キャロル・オコンネルとの初めての出会いはいしいひさいちさんの『コミカル・ミステリー・ツアー』でした(笑)。
そこで、どーも「無理ありすぎありえないスーパーヒロイン」が出てくるらしい、と知り、女性作家の場合、あまりにも己の生み出したキャラクターへの投影が強すぎるということもまま見受けられるので、まあ機会があれば読むこともあるか…程度で特にチェックしていた作家さんではなかったのです。別の言い方で申しますと敬遠していました(笑)。

で、このお話には主要・中心キャラクターが4人出てくるのですが、やっぱり(?)、若くて長身でハンサムで頭脳はバツグンに明晰、しかもメジャーリーグ入りしたくらい身体能力も高く、いいとこのボンボンで、過去はもちろん暗く、亡くなった一卵性双生児の(したがって美しい・自分そっくりの)妹にコンプレックスを残したまま、とーぜん彼女いないし女性に色気も出さないという、ああーこういう男性キャラクターが好きな人が今もいるんだー!! という大発見をいたしまして、正直、「かんべんして」と、ちょっとげんなりしました……。どーしてこういう味もそっけもない男をごにょごにょ……。

対する(?)女性キャラクターは、これはハリウッド映画にも言いたいのですが、「戦う女性は下品でなければならない」ということは決してない、ということがいつになったらわかってくれるんでしょうか…。
述べたようにハイスペック搭載の男性キャラ・ルージュに比べるとまだ生き生きとしていてアリは好感が持てますが。

そして誘拐された子どもたち2人なのですが、自分がかつて10才の少女だったことのある皆さん、自分が10才のときのこと、覚えていますよね…?
中にはこの物語の2人のようにガッツで熱い友情に結ばれていた親友がいた人も、もちろんいらっしゃるでしょう。
が、少なくともわたしは違いましたし、これくらいの年頃の子どものドライさ、クールさ、もっと言えば残酷さのようなものをいまだに思い出すことがある身としては、このオチは「ああ、やっぱりな」という感じで、申し訳ないのですが感動するところまではいきませんでした。

ミステリとしては登場人物が多い上、複雑なキャラクターが多すぎて、誰の目で物語を見たものか、共感が散漫になりがちになるところが残念です。
犯人は意外ではないです。いわゆる謎解きものではないので、ヒントを拾っていけば犯人が分かるタイプのミステリではなくサスペンスですので。サプライズはミステリ以外のしかけにあります。

新幹線の中で読み終わったのですが、おのれのスレっからしが悲しくて泣いた涙に風が冷たい帰り道でございました…。
心の美しい素直な方にはぜひオススメいたします。イヤミでなく、きっと感動できると思いますよ。
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by n_umigame | 2008-01-07 23:47 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
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