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『SFはこれを読め!』 谷岡一郎著(ちくまプリマー新書)筑摩書房

人生のイロハはSFで学べ! テクノロジーから人間の心理まで


ちくまプリマー新書は、こっそり”第2の岩波少年文庫”になるか刮目して見守っている良シリーズであります。
中学生くらいまでの読者層を想定されているけれども、どれを読んでもむしろ、大人が読んだ方がおもしろいかも! という内容です。
文章は平易で読みやすく、テーマもはっきりしていて直球ゴーです。
図書館に行くと、このシリーズをヤングアダルトコーナーに置いているところがありますが、もったいない。
一般の書架にこっそりひそませて大人につかませることこそ大事なシリーズかと思われますよ大人も読みましょー! クラフト・エヴィング商會の装幀もステキです。
惜しむらくはお値段は新書なみということです。これが1冊500円くらいだったら、出るだけ買うんだけどなあ…。

などと盛大にぶち挙げましたが、今回この本を手にとって買った理由の一番が、横山えいじさんのイラストだったなんてことは秘密です。『SFマガジン』だとまっさきに立ち読みするところです。(本屋さん早川さんごめんなさい。)

章を改めて紹介されている作家は、クラーク、アシモフ、広瀬正、レズニック、ハインライン、ディック(,フィリップ.K)、ブラウン(,フレデリック)、ニーヴン、ティプトリーJr、ホーガン、シモンズ(,ダン)など、けっこう正統派です。
SFの基本書誌をおさえる本ですから当たり前といえば当たり前なのですが、最後にも描かれていますが、やはりけっこう偏っています(笑)。シルヴァーバーグ、ヴォネガットJr、ブラッドベリ、ヴェルヌ、ハミルトン、ベンフォード、ベスター、ル=グウィン、スミス(,E.E)あたりがごっそりとありませんぜダンナ!!

とはいえ、ふつうのSF、と言うと語弊があるかもしれませんが、平均的な小中学生が初めてこの手のお話を読んで「この本、おもしろい! SFっていうんだ! ふんがー!!」と大コーフンしてくれるとうれしいなv というラインナップではありますよね。
そして、やや古い作品は、「科学は人類をけっこう幸せにすることがある」というものと、「科学は行きすぎると人類の手に余り、あまつさえ、地獄の釜のフタを開けるものである」というものとに、きれいに分かれるものが多い気がします。
(「科学は諸刃の剣である」という「科学の均衡の大切さ」を描いて秀逸だったのはやはり、ル=グウィンの『ゲド戦記』1巻3巻だったと思います)

逆に言うと、ここに紹介されている作品のどれを読んでもおもしろくなかった場合は、やはりSFに合わない方なのではないかという気もします。
中にはベスターやヴォネガットには大ハマリしたけどほかの作家のは味しなーいという人もいるかもしれませんので、SFというジャンルはあなどれませんが。

北村薫さんだったが、「小説を書くということは、たった一度しか生きられない人生に対する挑戦だ」というようなことをおっしゃったとか。(うろ覚えですみません…)

SFは、この小さな芥子粒のような星の上で、たった一度しか生きられない一瞬の人生に対する挑戦なのかもしれません。
何とも言えずオタクくさいジャンルであることは否めませんが(笑)、おもいしろいですよ、SF。
よかったら、読んでね。
by n_umigame | 2008-05-11 19:43 |