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*さいはての西*

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『タンゴステップ』 上・下 ヘニング・マンケル著/柳沢由実子訳(創元推理文庫)東京創元社

彼は54年間、眠れない夜を過ごしてきた。
 森のなかの一軒家、選び抜いたダークスーツを着て、人形をパートナーにタンゴを踊る。だが、その夜明け、ついに敵が彼を捕らえた……。
 ステファン・リンドマン37歳、警官。舌ガンの宣告を受け、動揺した彼が目にしたのは、自分が新米のころ指導をうけた先輩が、無惨に殺害されという新聞記事だった。動機は不明、犯人の手がかりもない。治療を前に休暇をとったリンドマンは、単身事件の現場に向かう。
殺された元警官モリーンの住んでいた場所を訪ねたリンドマンは、地元の警察官と協力しつつも、独自に捜査を開始する。だが、調べを進める彼の前に、新たな死体が。殺されたのはモリーンの隣人だった。同一犯の仕業か、それとも……。
 次々とあきらかになる、先輩警察官の知られざる顔、そして意外な過去。自らの病に苦しみ、迫り来る死の恐怖と闘いながら、リンドマンは真実を追い求める。

 ヨーロッパ各国で揺るぎない人気を誇るヘニング・マンケルが、現代スウェーデン社会の闇と、一人の人間としての警察官リンドマンの苦悩を鮮やかに描き出す!
 CWA賞受賞作『目くらましの道』のあとに続く、スウェーデン推理小説の記念碑的作品。
(出版社HPより)


マンケルのヴァランダー・シリーズでない作品です。
どうもヴァランダー・シリーズが完結したあと書かれたらしいです。

今回の主人公は37歳の警官、ステファン・リンドマン。
舌にしこりができたので検査したところ悪性の腫瘍だったことが判明し、医師からは「ガンが死亡宣告だった時代は終わりましたよ」と言われたものの、怖くて怖くて落ち着かない。
とりあえず休職することになったものの、放射線治療が始まるまで手持ちぶさたということもあって、かつて自分を指導してくれた退職警官が殺された事件を独自に調べ始めるのだが…という始まり方なのですが、主人公の知らなかった過去の事実などを二重三重にからみあわせていく様を描くことにかけては、まことに達者です。

ただ立て続けに読んできたせいか、どうしてもご都合主義的に話が展開する部分が鼻についてしまい、途中で退屈してしまいました。

また、ステファンのキャラクターがいまひとつ好きになれないということもあり。
ヴァランダーもたいがい陰気なキャラクターでしたが、ふとしたときに見せるやさしい人柄がしみてきました。
ステファンの場合は仕方がないと言えば仕方がないのですが、自分の病気のことでいっぱいいっぱいになっているので、どうしても自己中心的なところが出てきてしまって、それがなんだかなあという印象を残すのかもしれません。

それとヴァランダーシリーズを読んでいるときから気になっていたのですが、登場人物のしゃべり方や、地の文の訳が一本調子で、さすがにプロットだけで引っ張っていくにも限界がある気がします。これももちろん立て続けに読まなければ気にならなかったのですが、なんだかつっけんどんな日本語だなあと改めて思ってしまいました。

とはいえ、スウェーデンの社会問題をエンタメに上手にからめて見せるところなどは、遠い極東の地に住んでいる身には非常に勉強になりました。

ヘニング・マンケル、これだけ読んだけどいまいちだったとかぶっちゃけつまんなかったという方は、できればヴァランダーシリーズも読んでみることをオススメいたします。
by n_umigame | 2009-01-03 23:30 | ミステリ