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*さいはての西*

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『大脱走』(1963)

やっぱり、いいよね、脱走!!
以上。


というのもあんまりなので、以下ネタバレです!!(結末に触れています)
















見たことなかったんか。
はい、ありませんでした。

かの有名な大脱走マーチに乗って、何ともお気楽な雰囲気の中で始まるのが意外でした。
「ええ? 捕虜収容所から脱走するお話じゃなかったけ?」と思ったくらいです。
いやまあそれで間違いなかったのですが、ひと頃のハリウッド映画のアメリカ(善)vs.ナチ(悪)!みたいなお話ではありませんでした。

収容所の所長はいちおう見た目は冷酷そうな顔の俳優さんですが、役柄としてはドイツ空軍であることに誇りを持ち、ゲシュタポやSSとは一線を画すひとかどの人物として描かれています。役名からして貴族出身のぼんぼんという設定なのでしょうが、そのせいか部下にもユーモアも解す余裕があり、基本的に温情的な処遇を受けられる捕虜収容所。

に、さまざまな特技の腕に覚えのある脱走名人たち、つまり最強のドリームチーム編成が可能な問題児ばかりをわざわざ一カ所に集めちゃった。

そこでどうなるかというと、ちょっととうの立ったボーイスカウトのキャンプ場みたいに。(作品中にも「ボーイスカウトにいたことがある」というセリフが出てきますので、確信犯かも知れませんが)

いちおう「脱走不可能な収容所」ということになっているので、お約束として「脱走しようとしたらこうなりますよ」という「生け贄役」も描かれているのですが、まったく悲壮感もなければ、捕虜たちも芋焼酎を作ったりして(味見するシーンが笑えますね)、「むさいよ臭いよおうちに帰りたいよ!!」みたいな雰囲気でもなく小ぎれいなもんです。
これだけみごとに男性しか出てこない映画というのもすごいかもしれません。今時の映画だったらきっとカフェのシーンとかドイツ軍に女性の将校がいたり、せめて故国の恋人とかが回想シーンで出てきたりして、なんだかんだで女性を登場させたのでは。

群像劇なのですが、うわさどおりスティーブ・マックィーンの光る映画でありました。
結局、意外なキャラクターだけが脱出に成功するのですが、実話をもとにしているといっても、これだけほぼ全員死んでしまうというのに、なんだか明るいんですね。

「脱出不可能」と言われたはずの収容所で大規模な脱走を出し、その責任を取らされて、温情的な所長は(ロシア戦線に?)飛ばされ、代わりに「いかにも」なゲシュタポやSSが収容所を統括することになります。
そんな中へスティーブ・マックィーンが連れ戻されて来るのですが、にやにや笑って、また独房で壁にボールをぶつけてキャッチボールしているシーンで終わるのですね。

何十人死んでもあきらめない、不屈の精神と楽天性。


テーマと雰囲気のミスマッチが何か心の中にひっかかりを残す映画でした。
3時間の長尺ですが目をそらさせません。
(惜しむらくは所長もゲシュタポもアメリカ人に見えますということでしょうか。)
by n_umigame | 2009-05-30 23:08 | 映画・海外ドラマ