2018年 05月 26日 ( 1 )

ITV版「メグレ警視」シリーズ1~2(4話)

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■AXNミステリー公式HP
 

「Mr.ビーン」のローワン・アトキンソン主演!
「刑事フォイル」「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」の製作陣が手がけた、ジョルジュ・シムノン原作の本格ミステリーシリーズ
看板番組「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」「刑事フォイル」が完結し、これらの後任を担う番組としてITVが2016年に放送した最新作。初回放送時7,200,000人の視聴者かつ28.8%のシェアを獲得し、文句なしの大ヒットとなった。
「刑事フォイル」のプロデューサー、「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」の脚本家が、日本ではファンの多い「Mr.ビーン」のローワン・アトキンソンを主演に迎え手がけた、本格ミステリーシリーズ。
(AXNミステリーより・画像もすべて)

***

あれだけ「日本で放送してほしい!」と大騒ぎしておきながら、せっかく放送していただけたのに感想をアップしないのも不義理かと思い、遅ればせながら感想をまとめておきたいと思います。

めちゃくちゃ長いので、ご用とお急ぎのない方だけ以下どうぞです。

***

キャストについてなどはこちら()の記事で一度ご紹介していますので、今回は実際に見た感想をつらつらと書かせていただきます。


***

最初から総評となりますが、「運命の修繕人」メグレを、とかくフランスとはそりが合わない因縁の仲のイギリスの人が描くとどうなるか、というところに、興味津々でした。(イケズ)
配役に関しては、先に記事にもアップしましたとおり、止め絵で見ている限りでは不安も不平もありませんでした。
原作のメグレはビッグ&ファットガイ(だけど身軽)なので、ローワン・アトキンソンの細長いシルエットとは正反対なのですが、実際に動き出しても視覚から入ってくるキャラクターのイメージでこれは飲み込めないという人はいませんでした。

ウィキペディアの当該ページによりますと、ロケはイギリスではなく、ブダペストとハンガリーで行われたそうです。
Maigret (2016 TV series)

セットなどをPinterestにアップしている方がありました。
↑ちょっと生々しい画像もあります。

眺めているだけで眼福であります。

それで、だからというわけでもないのですが、全体的にあまりフランスっぽく見えなかったのだけが残念でした。
本当に細かいところなのですが、内装や衣装など、フランスを意識しているんだろうなということはわかるのですが、それがかえって、これがイギリスの人が作ったドラマだということが透けて見えてしまっているように感じてしまいました。そもそも英語で話してますしね。
キャラクターの名前だけフランス語風に発音していて(英語ならメグレの名前も「メイグレット」というように発音しそうです)、パリとか固有名詞は英語の発音ですし、原作(原文?)では「パトロン」と呼ばれているメグレが「チーフ」と呼ばれているのも、原作既読組には座りが悪かったです。
そういう細かいところの積み重ねが全体を作っているので、やはり細部も大事だなと思いました。

ローワン・アトキンソンのメグレは、決して悪くはないのですが、メグレ警視かと言われるとやはり違うかなというのが正直な感想です。
メグレは元々、個性があるんだかないんだかわからないようなキャラクターですが、あるものはあるとして受け入れる、清濁併せ呑む懐の深さがあります。ただそこにいるだけなのですが、その「ただそこにいる」存在感が頼もしいのです。
そこをローワン・アトキンソンは「無表情で受け流す」という演技でメグレを演じていて、それはそれで落ち着いた感じで良いのですが、茫洋としてつかみがたい原作のメグレというよりは、冷静沈着で有能な刑事という意味で、「打って出ている」メグレなんですね。

メグレものは何作かは早川書房から刊行されていますが、ほとんど河出書房新社から出ています。
その意味するところは、原著がいわゆる謎解きミステリーでもサスペンスでもなく、どちらかというと普通小説に近いものだからだろうと思います。

確かに、「人が殺されて、その犯人がわかる話」なのですが、人が殺されたから犯人を捜すのはメグレが警察官で、それが仕事だからです。
メグレは仕事熱心ですが、「謎」そのものに耽溺しません。
積極的に謎を解いている姿勢を読者に見せるタイプの探偵役ではありません。
場合によっては何もしていないようにさえ見えます。やがて事件は解決しますが、そこにごりごりと理屈をつけて説明するというスタイルは取りません。ですから、なぜその人物が犯人だったかとか、その犯行はその人物に物理的に可能だったのかとか、謎解きミステリーを読むつもりで読むと、消化不良になってしまいます。

メグレものは謎解きを楽しむタイプの小説ではなく、メグレという、ぬえのようなつかみどころのない、それでいて自分の人生や、身の回りの人やその有り様を、どうしようもないようなこともひっくるめて愛していることがわかる魅力的なキャラクターが、パリという街と渾然となって、見ているものを共に体験するような小説です。
わたしのようにそれがとても心地よくて、起きていることは悲惨だったり醜かったりするのに、いつまでもこのメグレのいる世界にいたいと思ってしまう人にはおすすめです。
が、謎を解くことを主眼としたこってりミステリーを味わいたいと思っていた向きには、あっさりしているうえに何を食べさせられたのかすらわからない、ということになってしまうかと思います。
ドラマは、この後者をターゲットにしたのかなと感じました。

シャーロック・ホームズとロンドン、エラリイ・クイーンとニューヨークのように、特定の都市と切り離せないタイプの探偵がいますが、メグレとパリは切り離せないものだと思います。
ローワン・アトキンソンのメグレは、このパリと半分同体化しているような感じがないように思います。ローワン・アトキンソンがどうしても典型的なイギリスの人というイメージがありますし、ほかのキャストもスタッフもイギリスの人なのだから、仕方がないと言えます。

ドラマとしてつまらないとか、クオリティが低いということでは、まったくありません。
謎解きが好きな人をターゲットにしたミステリードラマとしては、(不遜な言い方ですが)過不足なくよくできているドラマだと思いました。
でも、イギリスにはクオリティの高い謎解きミステリー小説は、たくさんあるわけです。
であるならば、なぜ、しかも今、イギリスの人がメグレものをテレビドラマにしようと思ったのか、結果成功したと言えるかと問われると、やはり疑問が残る作品かと思いました。
現在シーズン2の4話まで見ましたが、その問いには答えてもらえませんでした。

メタ的な理由、大人の事情とも言いますが、AXNミステリーの紹介にもあるように、ITVは「名探偵ポワロ」の終了を受けて、これに代わる人気定番ドラマを制作したかったようです。
「ポワロ」は、シリーズ最初の頃は1回30分番組で、ユーモアを上手に交えてた視聴しやすいドラマでした。尺が長くなり、重厚な内容も放送しだしたのはもっとあとのシリーズになってからです。
メグレは最初から長いし重いし、上述したように、イギリスの人は特に、このフランスを舞台にしたイギリス人が作った仮装フランスドラマをどういう意義をもって見ているのかという部分も疑問が残り、シリーズ3以降のロングランは厳しいのではないかと、正直感じてしまいました。
具体的には各エピソードの感想に書きましたが、ローワンさんのメグレは、原作のメグレが持っている良い意味で猥雑なところがなく、あまりにも清潔すぎます。
制作してくれたらもちろん見たいですが、もうひと味ほしいところです。

***

実際にドラマを見てからのキャラクターについて。

原作ではメグレ班のレギュラー刑事は、リュカ、ジャンヴィエ、ラポワントの3人。ほかにトランスと、<無愛想な刑事>ロニョンが登場します。
ドラマでは、一番の古株でメグレが息子のようにかわいがっているリュカは登場せず、ジャンヴィエ、ラポワント、ロニョンだけがレギュラーで登場しています。
確かに、リュカとジャンヴィエはどちらもメグレがかわいがっている部下なのですが、ややキャラがかぶるところがあり、ドラマでどちらか一人だけ採用しようとなったようですね。なぜそこでジャンヴィエを残したのかわかりませんが、リュカより名前が発音しやすいからかもしれません(笑)。
ラポワントは原作では<チビの>と訳されていますが "petit Lapointe"なので、一番年若いというほどの意味です。登場したときは新人で初々しくて、メグレの役に立とうと必死で仕事をしている様子がほんとうにかわいくてほほえましいのです。
ロニョンはメグレの部下ではなくて、モンマルトル署に所属の刑事です。まじめに仕事をしていて、気の毒な境遇の家庭なのですが、ひがみっぽい上にだらしない格好をしていることが多いため、刑事仲間からあまり好かれていません。
メグレのいるパリ警視庁(司法警察局)がシテ島のなかのオルフェーヴル河岸にあるので、単に「オルフェーヴル河岸」というとパリ警視庁を指すことがあります。日本でも警視庁のことを「桜田門」と言うような感じでしょうか。そのままずばり「オルフェーヴル河岸」というタイトルの映画がありました。(邦題『あるいは裏切りという名の犬』ジェラール・ドパリュデュー主演。一時期はやったこのハードボイルドポエムタイトル好きでした…(笑)。)フランスの警察機構についてはWikipediaなどをご覧ください。
この辺りのキャラクターは、第1話は紹介に終わった感じですね。

忘れてはならないのは、メグレ夫人の存在です。
メグレ夫婦はおしどり夫婦で、お互いのことをとても大事にしているのが伝わってくる素敵なご夫妻なのですが、ドラマは原作以上に登場シーンが多くて、うれしかったです。
演じているルーシー・コフー(Lucy Cohu)さんはやはりITVのドラマによく出てらして、『名探偵ポアロ』の「チョコレートの箱」のデリュラール夫人(冒頭で死ぬ人)、『ミス・マープル』の「ポケットにライ麦を」、ほか『トーチウッド』『ルイス警部』『ブロードチャーチ』『ミステリー・イン・パラダイス』等、日本でもおなじみのドラマに出演されている俳優さんです。わたしは『リッパー・ストリート』が一番印象に残っています。



***

以下、各話の所感です。
ネタバレになりますので、気にされる方はここで回れ右願います。








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by n_umigame | 2018-05-26 23:33 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)


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