タグ:本 ( 563 ) タグの人気記事

『すべて忘れて生きていく』北大路公子著(PHP文芸文庫)PHP研究所

d0075857_19154271.jpg

小さい頃から「早くしなさい」と言われ続けた私が気がついた世の中の真実とは――。「どんな毎日にも笑えることを見つけることができる」と信じる著者による、珠玉のエッセイ集。相撲への愛が迸るロングエッセイ、日常のゆるい出来事を導入にいつの間にか本の内容に鋭く切り込んでいく油断のならない書評集、奇妙な味わいの掌編小説二編も収録した、キミコの魅力に満ち溢れた一冊! 本人も「書いたことを忘れていた」貴重な原稿が満載です。
(出版社HP・書影も)


北大路公子さんの新しい本が次々と読めて、うれしいです。

やったらだめだとわかっているのに、また「通勤中の電車の中で読む」ということをやってしまい、何かの罰ゲームみたいになってました。
はたから見たら、沿線の不審者再び。
いつも同じ車両に乗り合わせる方々には「またあいつか」で済んでいると思われますが(まだ通報されたことないし)、初めて見る人からしたら怪しいですよねえ…。そういえば最近、同じ時間の同じ車両で見かけないな、って方が何人かいるんですけど、なんでですかね。春だったからですよね。異動とかですよね。異動だよって言って。


さて、今回の本は、エッセイ集なのですが、キミコ(一方的な尊敬と愛着を込めた呼び捨て)のいつもの日常生活のひとこまだけでなく、書評と小説2本も収録されて、言うなればキミコの幕の内弁当(ただしコンビニで売ってる感じ)。
たいへんお買い得だと思います。
コンビニで売ってる幕の内だと思って侮るなかれですよ。ときどき料理人の方が監修したのとか、けっこう美味しいんですよ。また食べたいって覚えてるくらい。

書評は日本の小説が多いのですが、見開きで収まる程度の文字数でその本の良さが伝わってきて、何冊か読んでみたいなと思いました。書評や感想って、本来はこうあるべきですよね。(私は個人のブログなので、ネガティブなことも書いてしまいますが)
日本の小説はコスパが悪いので(そんな理由かい)(借りて読めよ)(でも本は買って読みたいの)あまり読まないのですが、これとこれは読みたいなーと付箋をびろびろと貼りました。


エッセイは、お相撲さんについて熱く語るおばあちゃまのお話がしみました。

 おばあさんから溢れていた、憧れやときめきや畏怖のようなものを今になって私は思い出す。(中略)誰かの愛情や「好き」を笑うことは恥ずかしいことだと、私はたぶんあの時初めて感じだのだ。(p.96)

うんうん、わかるなあ。
私もこういう場面に大人になってからも何度も、というか、日常的に出会うので、しみじみ「そうだよね、キミコ…!」とハグしたくなりました。(迷惑。)
あと、偉人伝とか読んで、ほかにこんなに立派にがんばってる人がいるから、自分はがんばらなくていいや。ってなる気持ち、めっちゃわかる。(だめじゃん。)


小説は、マジック・リアリズム的なお話でした。
これまで読んできたエッセイからもそれは感じていたのですが、どこまで現実でどこから夢か、わからないような作品も多かったですよね。
それをそのまま小説として表現されたような短編でした。
1本目の「まち」も2本目の「ともだち」もどちらもなんだか不気味なところもいいです。ホラーとかそういうお話ではないのですが、覚めない悪夢のような、境界のはっきりしないまま飲み込まれて、そこから脱出できないような気味の悪さがあります。それでいてどこか優しい感じがする。
エッセイ→書評と読んでからこの小説を読むとすんなりくる構成もよかったと思います。


「無理っす」(あとがき参照)とか言ってないで、こんな感じで、年に1冊ペースくらいで新刊が読めるとうれしいです。




[PR]
by n_umigame | 2018-06-09 23:58 | | Trackback | Comments(0)

『その部屋に、いる』S・L・グレイ著/奥村章子訳(ハヤカワ文庫NV)早川書房

d0075857_12000729.jpg
その部屋には、何かがいた…。強盗事件のトラウマに苦しむ夫婦は、気分転換にパリ旅行を計画する。節約のため、泊まるのは現地の住人の家だ。しかし、到着してみると、待っていたのは、どことなく不潔で陰気な部屋だった。不安をおぼえつつも、パリでの滞在を楽しもうとする二人を、やがて異変が襲う。どこかから聞こえる子供の泣き声。警告する老女―はたして二人は生きて帰ることができるのか。戦慄のホラー登場!
(Amazon.jpより・書影も)


全面的にネタバレしていますので、未読の方は回れ右でお願いします。







More
[PR]
by n_umigame | 2018-05-28 00:07 | | Trackback | Comments(0)

アーシュラ・K・ル=グウィンさん追悼

d0075857_19115119.jpg

2018年1月22日(現地時間)、アーシュラ・K・ル=グウィンさんが逝去されました。
88歳。ご家族のお話を記事などで伺う限り、安らかなご最期だったとのことです。

ご逝去の報を聞いてから何度か追悼記事を書こうと思ったのですが、どうしてもうまくまとまらず、立派な追悼記事は英語のものを始め、たくさんウェブ上でも読むことができますので、今さら自分がそこへ混じってもとも考えました。
ですが、そういうことではないだろうと思い直し、やはり個人的な気持ちを書き記しておくことにしました。とりとめのない、だらだらとしたものになるかと思いますが、お許しください。

それでも良いよという方のみ、以下、お入りください。





More
[PR]
by n_umigame | 2018-05-06 21:43 | *le guin/earthsea* | Trackback | Comments(2)

『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』ダグラス・アダムス著/安原和見訳(河出文庫)河出書房新社

d0075857_21072434.jpg

お待たせしました! 伝説の英国コメディSF「銀河ヒッチハイク・ガイド」の故ダグラス・アダムスが遺した、もうひとつの傑作シリーズがついに邦訳。前代未聞のコミック・ミステリー。
(出版社HPより・書影も)




現在Netflixでドラマが配信されている『ダーク・ジェントリー』の原作。
こちらもまさかダグラス・アダムスの新刊が、しかもわたくしの大好きな安原和見さんの訳で読めるなんて! 幸せ。

先にドラマを少し見始めていたのですが、これがまあ何が起きているのかぜんっぜんわかりません。
それでいったん休憩して、こちらの原作が出たのを幸いに先に読み始めたのですが、これがまあ何が起きているのかぜんっぜんわかりません。半分どころか4分の3読んでも、何なら残り数十ページのところまで読んでもわかりません。

なのにおもしろいってどういうこと。

ドラマの方は早々にけっこうえぐい展開になることもあっていったん休憩したのですが(無意味なグロを延々見続けるのはつらいものが)、小説の方はグロ表現はほとんどありません。
ですが、「電動修道士」などという単語が何の説明もなく出てくるわ、ダグラス・アダムスらしく偏執的なまでにまたソファーの話が出てくるわ、浴室に馬がいるわ、それなのに最後なんかいい話になってダグラス・アダムスだわ…てなるわ、とにかく『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズや『これが見納め』(みすず書房刊)がお好きな方なら、何も言わずにレジまで本を持って行ってください。ぜったい買ってよかった…どころかこのおもしろい小説1000えん(※税別)でおつり来るの? 今どき翻訳ものの文庫めったに1000えん(※税別)で買えないのに? 詐欺?(そこは信じて)てなりますので。

ドラマの方は舞台がアメリカに変更されていましたが、原作はやっぱりと言いますか、イギリスのケンブリッジ界隈でした。
ドラマは今年の1月2日からシーズン2の配信が開始されたものの、残念ながらシーズン2で打ち切りが決まってしまったそうです。
ドラマを完走していないので何とも言えないのですが、もしかしたらやはり、ダグラス・アダムスのいかにもなブリティッシュネスは、セオリーどおりイギリスを舞台にしてドラマも制作した方が合っていたのかもしれません。

ドラマの方を見ていると、「ドクター・フー」に雰囲気が似ているなと思っていましたら、元々「ドクター・フー」の一エピソードとしてダグラス・アダムスが脚本を書いていたものだそうです。どうりで。これをぜひ「ドクター・フー」でも見てみたかったです。

この小説は「ドクター・フー」のファンの方にもぜひおすすめします。理由はあとがきで訳者の安原和見さんが推理されているのを合わせてぜひお読みいただければと思います。




[PR]
by n_umigame | 2018-01-03 23:40 | | Trackback | Comments(0)

『雪と毒杯』エリス・ピーターズ著/猪俣美江子訳(創元推理文庫)東京創元社

d0075857_18583401.jpg

クリスマス直前のウィーンで、オペラの歌姫の最期を看取った人々。帰途にチャーター機が悪天候で北チロルの雪山に不時着してしまう。彼ら八人がたどり着いたのは、雪で外部と隔絶された小さな村のホテル。歌姫の遺産をめぐり緊張が増すなか、弁護士によって衝撃的な遺言書が読みあげられる。そしてついに事件が──。修道士カドフェル・シリーズの巨匠による、本邦初訳の傑作本格。解説=三橋暁
(出版社HPより・書影も)


映画『グレートウォール』のおかげで久しぶりに「修道士カドフェル」シリーズのことを思い出していたら(だいたい同じ時代設定)、なんとエリス・ピーターズの新刊が! 発売時に情報を取り漏らしていたのですが、おかげで真冬のシーズンに読めてかえってよかったです。
著者のエリス・ピーターズは1995年に鬼籍に入られていますので、まさか新刊が出るとは思っていませんでした。解説にくわしいのですが、「修道士カドフェル」シリーズは一度、社会思想社の現代教養文庫で全巻邦訳が出たのですが、社会思想社が倒産廃業され、その後まもなく光文社文庫から全巻再刊されたものの、現在はまた品切れになっているようです。せめてKindle等の電子書籍でいつでも読めるようにしていてほしい…。
サー・デレク・ジャコビの主演でドラマ化もされていて、ドラマも大好きだったのですが、こちらも日本盤ディスクは長年廃盤になったままのようで、本当に残念です。ヒュー・ベーリンガー役が3回も変わったからなの?(涙)

以下、ネタバレしていますので、もぐります。
明確なネタバレは避けていますが、ミステリー好きの方にはわかってしまうかもしれませんので、今からお読みになる方でネタバレされたくない方は、ここで回れ右推奨です。









More
[PR]
by n_umigame | 2018-01-03 23:38 | ミステリ | Trackback | Comments(0)

シャーリイ・ジャクスン原作『ずっとお城で暮らしてる』映画化

d0075857_18105484.jpg

(画像は原作邦訳の書影・出版社HPより)


※以下、2017年5月7日現在の情報です。


***

先日、久しぶりに読書会に参加させていただいたのですが、その際、課題書の『ずっとお城で暮らしてる』(シャーリイ・ジャクスン原作)が映画化するという話があったけど、あれはどうなったの? という話題になりました。

昨今、映画化やドラマ化の話が出ては立ち消えになることもめずらしくないので、これも、噂を聞いてからがけっこう長く、てっきり立ち消えになってしまったのかと思っていたら、進行していました。
失礼しました。

画像はすべてこちらのサイトからお借りしたものです。

d0075857_18113847.jpg

このお話の時代はいつごろなのだろうと思っていたのですが、この画像を見てると1940~1950年代なのかなあと思いますね…。原作の舞台はアメリカのはずなのですが、これも画像を見ているとイギリスのようにも見えます。
車に詳しい方なら、このチャールズのものらしき自動車を見て、時代と国を想像できるのかも知れません。


原作では、物語の語り手はメリキャット(メアリ・キャサリン)で、その姉のコンスタンスとの関係を中心に進行するのですが、キャストでクローズアップされているのは、『キャプテン・アメリカ』のバッキーこと、セバスチャン・スタンさんのようです。
今回、メリキャットとコンスタンスの従兄弟であるチャールズを演じるようです。
原作のチャールズはけっこうなクズなんですけど、イメージ的にファンの人はどう感じるのか、ちょっと気になるところです。

d0075857_18110907.jpg


IMDbを見ると、トップにクレジットされているのは、コンスタンス役のアレクサンドラ・ダダリオさんです。
『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』とその続編、『カリフォルニア・ダウン』などに出演。Wikipediaによると、「米映画サイトTC Candlerによる「最も美しい顔」ランキングで、2012年版で3位」に選出されたそうです。
原作のコンスタンスは28歳なので、現在31歳の俳優さんはぴったりかもしれませんね。

次は、メリキャット役のタイッサ・ファーミガさん。『記憶探偵と鍵のかかった少女』で主演された俳優さんです。現在22歳。
原作のメリキャットは18歳なのですが、18歳とは思えないような、幼いまま成長が止まってしまったような少女です。画像を見ていると、せいぜい15歳くらいに見えるけど18歳と言われれば18歳かな、という絶妙な雰囲気は出ているのではないでしょうか。

d0075857_18112611.jpg

ほかの俳優さんはわたしは知らない方がほとんどなのですが、メリキャットとコンスタンスの叔父であるジュリアンに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のクリスピン・グローヴァーさん。マーティのお父さん、ジョージ・マクフライを演じた俳優さんです。(長年お見かけしたことがありませんでした…)
原作では、ジュリアンは鬱屈した思いを抱えながらも夫婦揃ってお金持ちの兄の家に居候したようなので、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のときのちょっとなさけないジョージパパを思い出すのかもしれません。
ただし『バック~』はコメディでしたが、『ずっとお城で暮らしてる』は、落ち込んでいるときに読むと呪いにかかるようなタイプのお話です。

d0075857_18114572.jpg

さて、「映画」とご紹介していますが、IMDbのリリース予定を見ていると2017となっているだけで、しかも北米だけしか表示がないところを見ると、テレビ映画の可能性も大です。
脚本の方も、フィルモグラフィーを見ている限りではテレビシリーズの作品がほとんどのようです。
ハリウッド映画で名前と顔が知れた俳優さんが何人も出演されているので、日本でもCS放送あたりでかかるかもしれませんが、ちょっと劇場にかかるタイプの作品ではなさそうですね。

画像のセットなどが美しいので、見られる機会があれば見たいと思います。

■IMDb



[PR]
by n_umigame | 2017-05-07 22:40 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(2)

『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』川上和人著(新潮社)

d0075857_12590554.jpg
必要なのは一に体力、二に体力、三、四がなくて、五に体力?! 噴火する火山の溶岩、耳に飛び込む巨大蛾、襲い来るウツボと闘いながら、吸血カラスを発見したのになぜか意気消沈し、空飛ぶカタツムリに想いをはせ、増え続けるネズミ退治に悪戦苦闘する――アウトドア系「鳥類学者」の知られざる毎日は今日も命がけ! 爆笑必至。
(出版社HP・書影も)


タイトルからもお察しではあったものの、まえがきからして爆笑してしまい、電車の中で読んでいたら不審者決定本でした。
特に007シリーズのファンの方にはこのまえがきだけでも読むことをおすすめします。
「デスヨネー」って爆笑するしかありませんでした。
笑えるのはここだけではなく、本文でもリズミカルで読みやすい文章に乗せられて、ほぼ毎ページ笑っていました。

著者は森林総合研究所の研究員として在籍されている、ご専門は鳥類の先生のようなのですが、読み終わっても印象に残っているのは鳥類以外の知識ってのはどうなんですか。
「アルマジロは小銃で撃つと跳弾することがある」とか、なるほどと思う一方でアルマジロを銃で撃つ極道者がいるのかと気になって鳥どころじゃなくなりましたよ。

いえ、もちろん鳥の部分もとてもおもしろいし勉強になります。
中でもリアルキョロちゃんの考察の項。
畠山モグさんのリアルキョロちゃんのイラストのヤバさもさることながら、先生、何やってはるんですか。もっとやってください。
「キョロちゃんって、まさかと思うけど、あの森永製菓のキョロちゃん?」と思われた方、そのまさかですからご安心ください。わたしはキャラメルが入ったやつが好きでした。
「捕食者の目は前についているからキョロちゃんは捕食者」とか、そうですかとしか言えないのに、科学的に正しいのがもう爆笑です。

動物を追うフィールドワークは本当に体力勝負のたいへんなお仕事だということがわかるのですが、やっぱり笑いが止まりませんでした。申し訳ない。

全体的にそんなふうな軽い読み物と思いがちな雰囲気で通している本ですが、やはり科学者の冷徹な目で見られている部分もあり、イエネコを駆除せざるをえないことについて語られた部分などは、生き物を飼う、命を預かることの重さを考えさせられます。
特定の動物だけが殺されるときに「かわいそう」と言われることについては、やはりいろいろと苦慮なさることがあるのだろうなと。

「美しいだけの自然なんてない。テレビの風景は嘘ではないが、真実の一部でしかない。」
(p.65)

このあと「裏切りのない不二子ちゃんなぞ魅力は半減だ。」と続いていろいろぶちこわしなんですけどね。せっかくのいい話が。
先生、まちがいなく、オタクだと思います。
そこも親近感がわきます(笑)。

初めて著者の本を読んだのですが、ほかの本もぜひ読んでみたいと思います。




[PR]
by n_umigame | 2017-05-07 22:37 | | Trackback | Comments(0)

映画『グレートウォール』(2016)ノベライズとアートブック


映画『グレートウォール』のノベライズ(小説版)と、アートブック(設定資料集)がすばらしかったので、ご紹介します。

一部、映画のネタバレもありますので、未見の方はご注意ください。


d0075857_22401428.jpg
(左)原書、(右)邦訳書。




(右)『グレートウォール』マーク・モリス・ノヴェライズ/平澤薫訳(竹書房文庫)竹書房(2017年4月12日初版第一刷)
原案:マックス・ブルックス、エドワード・ズウィック、マーシャル・ハースコヴィッツ
脚本:カルロ・バーナード&ダグ・ミロ、トニー・ギルロイ

(左)"The Great Wall : the Official Novelization" Novelization by Mark Morris, Legendary, Titan Books, Feb. 2017

2ヶ月で翻訳出てるんですね。すごい。

映画のノベライズは、けっこうぺらっぺらの内容のものが多いと思うのですが、これはなかなかオススメです。
解説も目を通しておくといいと思いますし、内容も映画とけっこう違うところがあって、映画はブラッシュアップされたんだなあとか、翻訳や字幕と違うところでニュアンスの違いがあったりして、読み比べてみると楽しいです。

特に、映画を見てウィリアムとトバールのコンビにもってかれた方には、ぜひぜひご一読をおすすめいたします。
例えば、字幕では、おそらくわかりやすさ優先で、ウイリアムは上の名前、トバールは下の名前しか表示されていませんでしたが、原書を読むとどちらも上の名前で呼び合ってるじゃんとかね。
うふふふ。



d0075857_22395725.jpg
”The Great Wall : The Art of the Film” Abbie Bernstein, Titan Books, c2017

映画のコンセプト・アートブック、設定資料集です。

映画のアートブックはドリームワークス・アニメーションのものしか買わないと決めていたのに、丸1日悩んだだけで結局買ってしまいました。(実写映画で持ってるのはあと『インターステラー』だけですほんとうなんです)

このアートブックは買ってよかったです。
単体の本としてもすばらしく美しいのですよ。

↑は表紙。
俳優さんがいい感じで描かれています。特にマット・デイモンは、ウィリアムのいいところがよく出ている気がして、お気に入りです。
いい表情ですね。

装丁も凝っています。
d0075857_22401484.jpg

                                背。

背はかがり糸が見えるようになっています。糸は赤。きれいな赤です。
最初、乱丁かと思って購入先のAmazonに問い合わせてしまったのですが、Twitterでお世話になっている方から教えていただいた画像で、これはこういう装丁だということがわかりました。Amazonさんごめんなさい。フォロワーさんいつも貴重な情報をありがとうございます。

d0075857_22401329.jpg

                         のど。

金箔で色つけしてあります。
ちょっと心配なのが、金箔の色つけは時間が経過すると黒くなることがあるのですよね。
特に洋書の品質についてはこのあたりはやや心配かもです。
しかし今はとても美しいです。
あいだあいだから見える白いものは、中に挟んである紙です。印刷が擦れないようにしてあったのだと思います。
洋書でこんな細やかな気配りがされた本、初めて(笑)。

d0075857_22395627.jpg
わかりにくいかもしれませんが、綴じ糸が赤でおしゃれです。
雄大な中国の山岳。美しい絵で、ここだけでも飾っておきたい。


d0075857_22395613.jpg

                        長城の設定。

映画に出てきた長城は、IMDbのトリビアによると、特にどことは決めていなくて、観客の想像にまかせているそうです。

d0075857_22401377.jpg
裏表紙。

d0075857_22401593.jpg
                         クライマックスのシーン。

ノベライズによると、あそこは仏塔らしいです。
言われてみれば大雁塔みたい。
この色鮮やかなステンドグラスの装飾は、チャン・イーモウ監督らしいですね。
チャン・イーモウ監督は、色彩感覚が独特で美しい監督さんだと言われていますが、俳優さんの趣味もいいなと思うことが多いです。

d0075857_22395678.jpg

まだ開封していない、封蝋がされたもの。
勅命でも入ってるんでしょうか。洋封筒だけど(笑)。

d0075857_22401581.jpg
何かの図が入っているらしいですね。
もったいなくて封蝋を切れない。

ほかにもトレーシングペーパーに色刷りしてあるところが何ページもあったりと、かなり力を入れて造本されていることがわかります。
お金をかけて作っていますね。
タイタン・ブックスはほかのアートブックも何冊か持っていますが、いつもこんなに凝っているわけではなかったです。
造本が凝っているわりには、ほかのアートブックより少しお安かったので(買ったとき少し円高だったからというのもあるかもしれませんが)、なかなか良心的だと思います。

アートブックは、映画の印象そのままという感じの配分でした。
つまり、人間に関しては、主人公のウィリアム以外は、それぞれ2~4ページずつくらい、群像劇のように紹介してあります。
残りの、実に本の半分くらいは、饕餮(とうてつ)饕餮饕餮饕餮、ほぼ饕餮たん。
初期イメージからだんだんこうなってきたのね、という感じで、めくってもめくっても緑色。

饕餮たん好きさんにはぜったいオススメします。
この漢字見てるとあの映画の饕餮たん、なんであんなになったのかわかる気がしますね。このうじゃっと、ごじゃっとした感じが。
漢字って象形文字なので、漢字から実物を想像するというのは理にかなっていると思います。


この映画が好きで好きでたまらないという方には、例え文字の部分が読めなくても、絵や写真を見ているだけで十分元が取れると思います。文章の部分もそんなにたくさんありませんし。

文章の部分をまだ全然読めていないので、必要があればこの記事に追記したいと思います。






[PR]
by n_umigame | 2017-04-24 00:03 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

『その島のひとたちは、ひとの話をきかない : 精神科医、「自殺希少地域」を行く』森川すいめい著(青土社)

d0075857_21443968.jpg


「今、即、助ける」「できることは助ける。できないことは相談する」数々の支援活動で注目をあびる精神科医が、生きやすさのヒントを探す旅に出る。
(Amazon.jpより・画像)



本文中、
「今、即、助ける」
「できることは助ける。できないことは相談する」
「助かるまで、助ける」
が加えられます。

この本から学べることはたくさんありますが、人を助けるという点については上の3つに尽きるかとも思われます。


3万人の大台を切ったとは言え、依然として先進国の中でずば抜けて自殺者が多い国、日本。その日本国内に、なぜか自殺者数が有意に少ない地域があるという。著者がフィールドワークした中からその地域を5カ所取り上げ、紹介した本です。
この本には『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある』(岡檀著 講談社 2013年)というネタ元本があるそうです(こちらは未読)。ですので、フィールドワークと言うよりはそのネタ元本を著者が実際に見聞きしに行った体験記と言った方がよいかもしれません。


自殺するところまではいかなくとも、日本という国独特の閉塞感やムラ社会的な息苦しさを多少なりとも感じている人は多いと思います。人間は環境の生き物なので、取り巻いている環境が人間に与える影響は自覚するしないを問わず、とてつもなく大きいものです。「とてつもなく大きい」と考えた方がいいようだ、と自分の経験からも思うようになりました。

「ひとがとりまく環境とうまく対話ができなくなったときに、ひとは病む」。
至言だと思います。

ただ、この本で紹介されている自殺希少地域が万人に有効かと言うと、そんなことはないということにも言及されています。
紹介されている地域もユートピアではありません。
著者が、絶妙な距離感でゆるやかに人々が結ばれていると感じた地域も、人によってはわずらわしいと感じていることも紹介されています。

あちこちで言われていることですが、自殺が増えたりするとすぐ「昔は人々の絆が強かったので、こんなことはなかった」という、ネットスラング風に言えば「昔はよかった厨」がわらわらとわいて出てきます。
それを見るたび聞くたびに、今の方がいいに決まってるだろと、ハリセンでツッコみたくなります。

人間の絆(わたしはこの言葉自体は嫌いではありませんが、臆面もなく大声でこの言葉が言われるとき・言う人には警戒した方がいいと思っています)というものは双方向に働くもので、負の側面もあります。
その「しがらみ」が嫌だと思っていた人は昔から大勢いたに違いありません。特に同調圧力が強くムラ社会化しやすい場所ではそうではなかったかと思われます。
けれども昔は一人では生きていけませんでした。物理的に食えなくなったり、治安上無防備で、一人でいることは文字通り死活問題だったと思います。
それが、「物質的に豊かになりたい」と願って、戦後の焼け野原から立ち上がって必死で働いてきた高度成長期を生きる人々と、物質的に豊かになり、その利便性を享受できるようになった後続の人々が「煩わしい人間関係、いっしょにいると病みそうな人と食うために我慢して家族でいるよりは、一人で生きたい」という潜在的にあった願望を実現できるようになったことで、今があるのだろうと思います。
その願望が特殊な人の特殊なものだったとしたら、こんなにも広がらなかったでしょう。心のどこかにでもそれを願っていた人が多かったため、まんまと「そうなった」としか思えない側面もあると思います。
もちろん、心の中では一人で生きたいという願望があっても、人間関係を保険と考えてチームを組むという選択をしている人も多いと思います。人間関係は間違いなくセーフティネットとして機能することもありますから、どちらが賢明な選択かというと後者の方が生き延びる蓋然性が高いことは間違いありません。そんな打算的な思惑でなく、いっしょにいたいからチームを組む、セーフティネットは副次的なものという姿がいちばん良いことは言うまでもありません。

いずれにせよ、「こうありたい」「昨日より少しでもいい明日にしたい」という人々の希望が少しずつかなってきた結果が今なのだろうと思います。

紀元前の石板に「今どきの若い者は」という愚痴が掘られていたそうですから、SNSとかあったら昔の人も愚痴っていたにちがいなく、さぞかし今より目を覆うばかりの悲惨なあれこれが、ネット上で発信されたことでしょう。
日本の場合は同調圧力が強いがゆえに、嫌だと思っていても言えなかったという面も強かったのではないかと想像します。
「記録がない」ということは「事実としてなかった」こととイコールではありません。ないことを証明するのはいわゆる「悪魔の証明」で、困難です。
今生きている人の記憶はまちがいなく「思い出補正」されています。つらかったこと、悲しかったことは洗い流されて、うれしかったこと、楽しかったことだけが残るようになっている、脳というのはそういう都合のいい臓器なのだそうです。そうでなければ人間は生きていけないからだろうと思います。

今がもし昔に比べて人間関係が希薄に見えるとしたら、それは過去があまりにも過剰な束縛であったことの反動が来ているのではないでしょうか。振り子は反対方向に振り切れやすいものです。
人間は間違えます。調子に乗ってやりすぎることもあります。その極端さを是正する方法を探っていく、3歩進んで2歩戻る。それは人間が有史以来営々とやってきたことではないでしょうか。

現状を解決するためにできることは、やはりこれまで人々がやってきたことと同じこと、「昨日より少しでもいい明日にしたい」「自分が生まれたときより死ぬときの方がいい世界になっていてほしい」と願いながら一人一人が明日につなぐ、これしかないと思います。
100人、10人は救えなくても、一人を救う。他人は救えなくても、自分だけでも救う。これでも一人救えます。
その確実に救うことができた一人一人が、つなぐしかないと。

そのためのヒントがたくさんつまっている本でした。

自分ができることから始めたいと思います。






[PR]
by n_umigame | 2017-01-04 00:44 | | Trackback | Comments(0)

『みんなの道徳解体新書』パオロ・マッツァリーノ著(ちくまプリマー新書)筑摩書房

d0075857_21190606.jpg

日本人の道徳心は本当に低下しているの?小中学校での道徳教科必修化の前に、道徳のしくみをくわしく勉強してみよう!学校では教えてくれない、道徳の「なぜ?」がわかります。
(Amazon.jpおり・画像も)


今年の初笑い本はこちらをご紹介しようかと思っていたのですが、最後の3分の1が、とてもおもしろいのですが笑いはできないので、ふつうにおもしろい本ということで記事を書かせていただきます。(いや、それでええやろ)


「道徳」が必須科目になるそうですね。
なんだかいやな感じです。だいたい学校で教わってどうこうという問題ではないと思うことと、戦前戦中の修身の教科書みたいな「美談」を上から押しつけるつもりなんじゃないかという気がして、偽善臭がすでにぷんぷんします。
自分の個人的な経験からも、あのお涙頂戴というか、小ぎれいな話で本質を覆い隠し、感動を強制するような雰囲気が、子ども心に大嫌いでした。教科書と思っていましたがあれは副読本だったのですね、も、暗いし怖いし読んでてぜんぜん楽しくなかった。

本書でも触れられていますが、こういうことを良しとしたがる人は、何かあったときに「自分はやることはやった(鼻ほじ)」と言い訳するための保険が欲しいのだろうと思います。アリバイ工作ですね。見え見えですので、ちょっとはその手のミステリーでも読んで、自分たちこそ勉強し直してほしいと思います。(そこをかい)


…というような自分のもやもやを、いつものマッツァリーノ節で笑い飛ばしてくれる本でした。
もう、マッツァリーノさんのクールで的確なつっこみの数々に、正月から笑い転げましたね。ありがとうございます。
ちくまプリマー新書なので、あっという間に読めますしね。プリマー新書、装丁もかわいいし(クラフト・エヴィング商會さんです)物理的に軽いし(紙質かな?)大好きなのですが、いかんせん大人にはややコスパが悪いかもしれません。同じジュニア向けでだと岩波ジュニア新書の方が腹にたまるものが多いように感じます。


笑えるところ以外には、今回も名言多しですよ。

 よのなかで本当に必要とされるのは、ともだちを作る能力ではありません。ともだちでない人と話せる能力なんです。
(p.42)

 相手に文句をいわないのは、仲がいいのではなく、相手に気をつかっているだけです。
 気軽に文句をいいあえる間柄を、本当の仲良しというのです。
(p.68)

 まじめに見える子も問題を起こす。それは事実です。しかし、ふまじめな子はもっとたくさん問題を起こしてるのですよ。
(p.69)

ここを読んで、作家のマージョリー・キナン・ローリングスが言ったという、
「一生のうち、一度か二度は悪い男に恋したほうがいい。まじめな男のありがたみがわかるから。」
という言葉を思い出しました。(引用は『人生を振り返るとき、もっと大胆に生きていたらどんなに素敵だっただろう、なんて思いたくないでしょ?』(アルファポリス 2013年)より)


最後の方は死刑についてです。ここは笑えませんが、たいへんおもしろいです(おもしろいと言うと語弊がありますが)。
死刑についての考え方は基本的にマッツァリーノさんに賛同いたします。
マッツァリーノさんは薄っぺらなヒューマニズムでこういう立場を貫いていらっしゃるわけではないことがよくわかりますので。

ほかにも、自然現象を擬人化することには反対である、とか、「泣いた赤鬼」は自己犠牲ネタの中でも不愉快な話だとか、共感できるところがたくさんありました。
「泣いた赤鬼」の話はおかしいと言ったかたはほかにもあって、漫画家の坂田靖子さんです。何というか、透徹した目と感性を持った人は同じように分析されているのだなと思いました。


ところで、パオロ・マッツァリーノさんは、とうとう正体をカミングアウトされたのでしょうか。ネット上でちらほらお名前を見るようになってきましたが、まだ正式には公表されていないようでもありますし。
マッツァリーノさんの芸風(芸風言うな)が好きなので、今後もこんな感じで執筆を続けてくださればと思います。





[PR]
by n_umigame | 2017-01-03 23:16 | | Trackback | Comments(0)


Welcome. 本と好きなものがたり。


by n_umigame

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

おたのしみ*etc

○日々の自分弁当の記録→
*500ml弁当*

タグ

(563)
(530)
(466)
(315)
(299)
(271)
(186)
(163)
(83)
(68)
(64)
(57)
(50)
(41)
(28)
(20)
(13)
(13)
(12)
(11)

カテゴリ

全体

ミステリ
*ellery queen*
*le guin/earthsea*
日々。
コミックス
映画・海外ドラマ
ICOCA/イコちゃん
無口なウサギ/UB
ウサビッチ/Usavich
ドキュメンタリー
サークル
サークル/在庫等
Krabat/クラバート
アロマ・バス
web拍手

ブログパーツ

以前の記事

2018年 06月
2018年 05月
2018年 01月
2017年 08月
2017年 05月
more...

最新のコメント

>お節介おばさん さま ..
by n_umigame at 20:54
本日いきなり24話だけを..
by お節介おばさん at 23:10
>ジェーンドゥさま コ..
by n_umigame at 22:03
過去日記にコメント失礼し..
by ジェーンドゥ at 12:17
>コクレアさま はじめ..
by n_umigame at 13:44
初めまして。ル=グウィン..
by コクレア at 13:57
>とも さま コメント..
by n_umigame at 20:49
初めてコメントさせて頂き..
by とも at 00:14
> kazさん コメン..
by n_umigame at 11:23
初めまして、ジョージ・ジ..
by kaz at 01:02

ライフログ


マダガスカル3 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

フォロー中のブログ

今夜もeat it
それいけ!めんたいこちゃ...
さつえいだ!チャーリー!
こま撮りえいが『こまねこ...
ピンクシフォンをさがして。

ファン

記事ランキング

検索

ブログジャンル

本・読書
海外スター・ドラマ

画像一覧